「音楽の本場で学ぶ。」なんと素晴らしいことか…きっとバラ色の生活が待っているに違いない。ろくに情報収集もせずにそう考えていた僕は救いようのない阿呆であった。
留学はバラ色などではなく、実に雑多な色をしているのだ。
最初にプラハで勉強することとなった去年から今に至るまで、とある問題を抱えている。留学生であれば、誰しもが抱える問題だろう。
その問題こそ今回から数回にわたって紹介する「VISA」にまつわる問題である。
VISAとは
まず…そもそもの話
そもそも、VISAとは何なのだ? パスポートは持っているが、VISAはいるのか?修学旅行でグアムに行ったとき、VISAの申請なんてした記憶がないが、あれは先生方がやってくれていたのか?マスターカードでは駄目だというのか!
そのような疑問を持っている方も少なからずおわしまするに違いない。しかし、まずは申し上げたい。ここで話しているVISAとはクレジットカードではない!かつてのM.AKIRAも区別がつかなかった。なぜ、そんなややこしい名前にしたのか、責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。(調べてみると、クレジットカードのVISAは、「Value International Service Association」の頭文字であるらしい。wikipediaより)
では、ここでいうところのVISAとは何なのか。気取らず日本語で言うと、「査証」である。
「ふむ、なるほど。そうであったか。理解した。」となる人はいないだろう。
パスポートとVISA
VISAについて理解するためにも、パスポートとは何であるか理解する必要がある。
パスポートは日本語で表記すると「旅券」である。簡潔に言うと、所持者が所属する国の政府機関が発行する「国際的に通用する身分証明書」だ。また、所有者の保護を渡航先の国の政府機関に要請する書類でもある。
実際に、パスポートには以下のように記されている。
日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。
日本国外務大臣
では、査証こと、VISAとはなんなのか?
渡航先の国が自国以外の渡航者に対して発行する書類であり、(要は、日本政府が日本人に対して発行することはない。)その人物の所有するパスポートが有効なものであり、その人物が入国しても問題ないことを示す証書である。
その人が、身元を偽っているわけでもないし、正当な目的のために入国することを証明する書類だ。
こちらはチェコの場合、パスポートに写真付きで貼付される。
ここで重要なのは、VISAは入国できることを保証する書類ではないということだ。あくまでも、入国の許可を出すのは入国審査をする職員である。
とは言うものの、心配しなくとも入国を拒否されることはないだろう。大量に麻薬をもって入国しようとしたとか、VISA取得後に国際指名手配とかされない限り…皆々様、十分に注意されたし。
VISAはいつ必要?
留学を考えている方の中には「以前に海外旅行に行ったが、VISAの申請なんて面倒臭いことはしなかったぞ!何故いまさら必要なのだ。」と思われる方もいるかもしれない。
「もっともだ!VISA申請なんてやってられるか!」と、僕の心が叫びたがっているが、講習会などの短期留学を除けば取得しておいたほうが良い。というよりも、取得は絶対だ。取得せずとも渡航はできるが、勉強に集中できないうえ、費用が跳ね上がるのだ。理由は後述。
日本のパスポートは世界最強
お盆休みや、年末年始、はたまた修学旅行で海外に行く方は大勢いる。しかし、そのほとんどが前もって、渡航先の国の大使館に行って申請してVISAを取得していない。
それはなぜか?
日本のパスポートは世界最強なのである。
英の「ヘンリー&パートナーズ」が、199ヵ国・地域を対象に、VISAなし、または、到着時のビザ申請で入国できる国・地域を調査した。すると、日本は190ヵ国でVISAなしで渡航することができることが判明した。2018年、この数で日本は単独首位となり、日本のパスポートは文字通りの世界最強のパスポートとなった。いかに日本人が信頼されているかよくわかる。有難いことである。
故に、海外旅行程度ではVISAの申請は基本的に必要ない。
「やはり、VISAなど要らぬではないか」
そうでもないのだ。残念である。無期限で無制限に何をしてもいいという訳ではないのだ。いくら日本人が国際的に信頼されているとはいえ…
VISAが必要な場合 ~その1~
海外旅行に行かれた方、日程を思い出してほしい。目的の国・地域に滞在したのは1,2週間といったところではないだろうか?長くいた方でもひと月だろう。羨ましい限りである。
留学に行こうと思われる方、カリキュラムを考えてみて欲しい。
1,2週間で終わるカリキュラムだろうか?もしそうであればこの記事はあなたには全く関係がない。
大概の人が、「留学」というと1年~5年間、現地で勉強することになるのではないだろうか。
実は、VISAなしで滞在できる日数には限度があるのだ。
チェコ、ドイツ、オーストリアなどのシェンゲン領域は、あらゆる180日のうち90日以内であれば、VISAなし(無査証)で滞在することができる。
夏休み中の講習会などは90日もやらないので、VISAは不要である。しかし、学校に入学して勉強するのであれば、VISAは必要なのである。
無理矢理、VISAなしで留学する方法もある。しかし、無駄が多すぎるのだ。
十数万円かけて渡航して、帰国してライフが回復するのを待って再び十数万かけて渡航する…費用対効果がマイナスになるのは目に見えている。これが、留学するならばVISAを取得しておいたほうが良い理由だ。
面倒くさい。しかし、諦めたまえ。VISAを取得するのだ。留学したくば。
シェンゲン領域
先刻、さらっとシェンゲン領域と書いたが、それについても触れておく。
よく、「EUは入国審査なしで自由に国境間を行き来できる」と言われるが、厳密には間違いである。自由に行き来できるのはこの「シェンゲン協定」を結んだ「シェンゲン領域」だけである。
今となってはもう脱退するらしいが、イギリスはEUに加盟している(いた)が入国審査は必要だし、逆にEUに加盟していないスイスやノルウェーはこのシェンゲン協定に参加しているため入国審査はない。
シェンゲン領域にVISAなしで滞在できる期間「あらゆる180日間に90日以内」だが、計算が大変という方はEUの公式ページで「Short-stay VISA Calculator」というものがあるのでそれを活用すると安心だ。
日付は、「DD/MM/YYYY(日付/月/年)」という形で入力する。
VISAが必要な場合 ~その2~
金を稼ごうとするときである。
ワールドツアーでアメリカに行くとか、ベルリンフィルのオーディションに合格して奏者としてベルリンに行くとか…。
そうでなくとも、海外に転勤になったという場合でもVISAは必要である。この場合は「就業VISA」を申請する。「就業VISA」は残念ながら専門外なので特に触れない。いずれ、取得が迫られることもあろうかと思う。その際には改めて記事にする。
学生はアルバイトできる?
学生の本業は勉強であるが、可能であれば少し稼ぎたいものである。アルバイトができるかは国によって違うようだ。大使館に連絡を取って確認するのが必須となるだろう。せっかく学校に入学できても、不法就労で強制送還でもされればたまったものではない…。知り合いが大丈夫だといっても、留学する際、不明なことは必ず渡航先の在日大使館に相談しなければならない。
チェコでの留学生のアルバイトに関しては、今現在、言語力も時間も余裕がないので検討すらしていない。よって、まったく分からぬ。アルバイトをしている留学生がいれば聞いてみようと思う。こちらも今後記事にできればと思っている。
まとめ
- パスポート(旅券)は自国の政府が発行する国際的に通用する身分証明書
- VISA(査証)は渡航先の国の政府が発行する入国の推薦状
- 日本のパスポートはとにかく最強で、海外旅行の際にはほとんどの場合VISAは不要
- 留学など、長期で滞在する場合はVISAは必須
- 不明なことは必ず大使館に確認
最後のまとめにも書いたのだが、何度でも言おうと思う。
不明なことは必ず大使館に確認を取る。
情報の出所が大使館であれば構わないが、ソースがほかの場所から出ているときは、必ず再び大使館のホームページなどで確認する。
このブログは参考までにとどめておいてほしい。
時代は変わるのだ。それによって必要な手続きも書類も変わる。常に最新の情報を入手し、大使館の情報を隅から隅まで熟読することを強く勧める。
折角、本場で本物の歴史のある伝統を学ぶのだ。最大限吸収できるように準備は怠らないでおこう。
次回は実際にVISAの申請に必要な書類を用意する方法について紹介する。
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