公開初日、朝一番で劇場に足を運び、「HUMAN LOST 人間失格」を鑑賞した。
結論から言えば、良作だろうなと感じた。
しかしながら名作であるとは思えなかったのだ。
感想
まず、この作品が良作だと思った理由…
映像美
作品の設定が、遺伝子操作や体内に組み込まれたナノマシンによって長寿を実現した昭和111年の日本と、近未来SFとなっている。
今回の作画はCGと手書きのアニメーションの中間を行くような印象で、同時期に公開されたアニメーション作品「アナと雪の女王2」と比べると絵に日本らしさがある。
CGを使用すると、通常はどうしても動きに違和感が出てくるのだが、この作品には一切そういった違和感はなかった。
欲を言えば、固まっていた髪の毛が一本一本動いて欲しかった。
しかしながら、映像は一切の淀みのない美しく完成されたものであった。
息をつかせない脚本
作品に盛り込まれた用語、設定が多すぎるとの意見も目にしたが、冒頭から観客の許容量を超える用語と設定の波は、「未知なる危険が知らぬ間に近づいていのる」と不安を煽り、映画のつかみとしては及第点であったと思う。
余計なもの、説明的セリフは一切をそぎ落としたかのような脚本は、観客を置いてけぼりにしかねないが、実に疾走感あふれるものであった。
個人的には理解が追い付かない程度に走り抜けてゆく物語は、好みだ。作中の世界にいる、何も知らない一般人の気分で作品を楽しめるからである。
ただ、その辺りは人それぞれ好みの分かれるところであろう。
その映画は何回観たい?
人生の中で何度も見てみたいと思う映画こそ「名作」と呼ばれるに値する。
そのように僕は考えるのだ。
残念ながら今回鑑賞した「HUMAN LOST 人間失格」は「名作」に値しなかった。
何度も観たい映画と一度限りしか観ない映画にはどの様な違いがあるのか?
名作とは?
まず、僕が何度も観返した映画を挙げると、
- バック・トゥー・ザ・フューチャー
- セッション
- アメリカン・グラフィティ
- ジブリ作品全般
バック・トゥ・ザ・フューチャー、ジブリ作品により顕著だが、そのシンプルなストーリーは小学生でも容易に理解することができる。
しかしながら、作品の端々に特殊な輝きを放つセリフやシーンが組み込まれている。
「金曜ロードショーで放送していたジブリ作品を何気なく見ていたら、知らないうちにのめりこんでしまった」
という経験をしたことのある方も多いだろう。
展開を知っていて、結末も知っているはずなのに、なぜ何度見ても引き込まれてしまうのか。
それは、物語が多様な面を持っているからである。
いうなれば、絵画の様に平面ではなく、彫刻の様に立体的なのである。
人生を歩むにつれ、様々な経験を経て価値観が変わり、物語を鑑賞する視点が変わる。
正面から見上げていた時に見えていた作品と、成長して真っすぐ向かい合った作品、横から見た、裏から見た作品。
全て同じ作品を眺めていたとしても見えているものはまったくもって変わる。
誰にでも深く刺さる、普遍性を秘めた作品こそ、名作と呼ぶにふさわしい。
人生で5回観たい作品は名作
個人的な意見としては、最初に鑑賞したときに「今後、人生で5回ぐらいは見るだろうな」と思う作品は名作である。
これまでに多くの作品を観たが、大半は一回見れば事足りる作品だった。
一度観れば展開も結末も分かる。
物語の筋がいくら面白くとも、それ以外の魅力を持ち合わせていなければ、二回目以降鑑賞することはない。
平凡な作品は二回目の鑑賞にすら耐えない。
5回鑑賞してなお「面白い」と感じる作品には華がある。
「演技が…」とか「カメラワークが…」とか、そんな些細な問題を置き去りにする不思議な魅力。
それは時々フィルムにかけられた魔法の様に感じることがある。
まとめ
- 「HUMAN LOST 人間失格」は美しい映像と、安定したキャスト陣で、見ておいて損はないが、見逃しても特に損をするという訳でもない。
- 名作と言われる映画は人生のどのような状況においても深く刺さる普遍性を持っている
- 5回観てなお、面白い映画は名画だ。
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