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【ギターの巨人】スティーヴィー・レイ・ヴォーン~最後のブルースマン~

音楽
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個人的に、音楽家として一番好きなのはエリック・クラプトンだ。
しかし、ギタリストとして一番好きなのはスティーヴィー・レイ・ヴォーンだ。

一聴すれば彼の演奏だと分かる豪快なサウンドを武器に、アルバート・キングばりのスローなブルースから、コード弾きを中心にしたノリのいい曲まで、幅広い曲を弾きこなす。

産業ロック全盛の80年代に彗星のごとく現れた彼の姿は正に「最後のブルースマン」と呼ぶにふさわしい。

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SRVの魅力を垣間見る曲4選

スティーヴィー・レイ・ヴォーンの演奏はすさまじい。

どのレコードに針を落とそうとも、素晴らしい演奏がスピーカーから流れてくる。
彼の演奏スタイルは多岐にわたり、そのどれもが素晴らしいのだが、全体を網羅できるように異なった曲調、演奏スタイルの曲をピックアップする。

一音の重み

彼の名前を知って初めて聞いた演奏がこちら。

ハモンドオルガンとギターが掛け合うように奏でられるイントロ。
歌の合間に合いの手の様に入るギター。
音数は少ないものの、張りのあるサウンドと攻撃的なヴィヴラートは存在感抜群だ。

SRVサウンドの秘密

  • 極太弦

太く張りのある彼のシグネチャーサウンドは、使用している弦に一つの秘密がある。
エレキギターでは考えられないくらいの極太弦を使用しているのだ。

アコースティックギターによく張られているライトゲージ弦よりも一回り太い、ミディアム弦と呼ばれる弦と同じ太さの弦である。
いくら半音下げにチューニングしているとはいえ、弦長の長いストラトに、極太弦、ネックが反って弦高が高くなったストラト…常人には決して弾くことのできないセッティングで弾いている。

  • ティアドロップピックの使い方

極太の弦を張るのはなかなかにつらいものがある。
弦を引っ張って音程を上げる、チョーキング(ベンド)が極端に難しくなるし、ネックも反る。

なかなかトライしにくい極太弦とは違い、こちらの方法は今すぐにでもトライできる。

まずは、なるべく固いティアドロップのピックを用意する。

ティアドロップピックとは、下の様なタイプのピックのこと。

上の写真は実際に僕が使用しているピックなのだが、僕もレイ・ヴォーンと同じようなピックの使い方をしている。

通常、一番鋭利な角で弦を弾くのだが、彼はもうふたつの鈍角の方、Fenderのロゴの両端の角でピッキングをする。
Fの文字の下側が削れているのがわかるだろうか。

鋭利な部分で弾けば、シャープな音が鳴るのだが、鈍角の部分で弾くと、丸みがあって太い音が鳴る。

だがしかし…

極太弦と、ピックと、それと「チューブ・スクリーマー」というエフェクターと…色々彼の独自のサウンドについて考察がされているが、同世代のギタリスト、ブライアン・セッツァーはあるインタビューで次のようなことを語っていた。

「あるライブの後、俺とレイ・ヴォーンはお互いの楽器を交換して弾いた。俺のギターと俺の機材から出てきた音はまさしく彼の音だったよ。
みんなは、彼の足元とかピックアップとか、アンプのセッティングに秘密があると思っているみたいだけどそれは違うね。秘密は彼の手なんだ。俺が彼の楽器を弾いても俺の音しか出なかったんだよ。」

レイ・ヴォーンの機材で自分の音を出してしまうブライアン・セッツァーも凄いのだが…彼の音の秘密は鍛え上げられ、磨き上げられた右手のテクニックだったのだろう。

まとめ

ブルースというと地味な印象を持たれがちだが、彼の音楽は伝統的なブルースであると同時に非常にパワフルで、これからブルースを聞いてみたいという人におすすめのギタリストである。

因みに、彼は「スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル」というスリー・ピースバンドでの活動が主流だったが、キャリアの後期では、上の動画の様にキーボードも含めた編成で演奏することもあった。

鬼気迫るスローブルース

デビューアルバムにも収録され、ライブでは必ず演奏されていたと言ってもよい定番曲、「テキサス・フラッド」。
彼が強く影響を受けたアルバート・キングと似たフレージングでギターがむせび泣く。

ピックでのフルヴォリュームの激しい演奏から、ギターのヴォリュームを絞っての繊細な指弾き、静と動、ささやきから雷鳴へと変わる演奏は今なお多くのファンに愛される。

ミドルテンポのシャッフル

「シャッフル」の解説

シャッフルとは、3連のリズムのこと。
黒人がすり足で踊るリズムがもととなっているとも言われている、ブルースの特徴的なリズム。

このリズムに関しては、花村萬月氏が著書「俺のロックステディ」で、時計の音「チクタク」という擬音を使って解説している。

 

  • 一般的なポップスやロックと呼ばれる音楽のリズム:「チクタクチクタク...」
  • シャッフル:「チックタック・チックタック...」

と表すことができる。

このとき、アクセント、つまりスネアドラムが「タ」の位置に来る。

実際に曲に合わせて机なり膝なりを叩いてみよう。

「チク ’タ’ ク・チク ‘タ’ ク...」
「チック ‘タ’ ック・チック ‘タ’ ック...」

赤色マーカーの位置にスネアドラムの「タンッ」という音が来ているのがわかるだろうか?

これを理解できれば、どんな曲であろうと、ノルことができる。

因みに…

最初に紹介した「クロスファイヤー」と、次に紹介する「Could’n stand the weather(邦題:テキサスハリケーン)」は一般的な8分音符系のリズム。(4/4拍子)

この曲と一つ前の曲、「テキサス・フラッド」はシャッフル。(12/8拍子)

となっている。

まとめ

「クロスファイヤー」や「テキサス・フラッド」の様なこれぞ「ギターソロ」という器楽演奏も素晴らしいのだが、彼の魅力はそれだけではない。
歌のバックで奏でるリズムのノリも彼の魅力の一つである。

シャッフルの前へ前へと進む疾走感あふれる演奏は多くのレパートリーで聞くことができる。

スローなブルースの後にノリノリのシャッフルビート…2時間を超える様なライブでも観客は退屈しなかったことだろう。

豪快なカッティング

ギターの上手い人はみな、クリーントーンでのカッティングが上手いというイメージがある。

カッティングと聞いて真っ先に名前が上がりそうな名手ナイル・ロジャースの音とは違い、レイ・ヴォーンのカッティングは右手を重視した実に豪快なものだ。

彼のカッティングのセンスが如実に表れるのが上に挙げた動画だが、ライブ演奏の際は、単音を中心としたソロを取った後、コードを使いカッティングを中心としたソロを取ることが多い。

フレーズの美しさからリズムの躍動感、ギターの魅力を余すことなく表現することのできる類まれなギタリストと言えるだろう。

まとめ

1990年8月27日、ブルースフェスティバルを終えてシカゴに移動する途中、搭乗していたヘリコプターの不慮の事故により彼はこの世を去った。

長い活動期間であったとはいえないが、彼の遺したものは非常に大きく、また、確かに次の世代へと受け継がれている。

新三大ギタリストと呼ばれるジョン・メイヤーの演奏を聴くと、レイ・ヴォーンを思い起こさせる音を出していることもあるし、Fender社からは未だに彼のシグネチャーモデルのギターが発売されており、遂に、今年からはカスタムショップでの生産も始まったようだ。

「最後のブルースマン」
彼がそう呼ばれるのが悲しい。ギタリストにはブルースが必要だ。
正に沼(デルタ)の様なブルースの世界を旅する第一歩としてレイ・ヴォーンはよい先達となるはずである。

彼の遺した音楽はギターが朽ちるまで忘れ去られることはないだろう。

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