「なんてことだ…」
「ダーク・クリスタル」を視聴して驚嘆した。
初めてRPGの世界を旅した時の興奮、長編のファンタジー小説を夜通し読んだ時の非日常。
求めていたもの全てが、そこにあった。
概要
Netflixオリジナル作品(ここ重要)
1982年に公開された映画「ダーク・クリスタル」の前日譚にあたる物語。全10話。
惑星トラは1000年もの間、スケクシス族に支配されてきた。彼らは「真実のクリスタル」の守護者オーグラを騙し、クリスタルから力を得ることで寿命を延ばしてきたが、徐々にクリスタルの力に陰りが見え始める。
クリスタルの汚染によって広まる闇の力は、惑星トラの至る所に悪影響を及ぼしていた。
ある日、クリスタルが納められた「クリスタル城」で事件が起きる…
特殊な制作方法
この作品では、実際にセットを作成して人形を動かし、カメラで撮影した映像にCGを加えている。
この手法で得られる映像の魅力は…
- 異世界の幻想的かつ精巧な美術
- 躍動感あふれるカメラワーク
この二点の両立に尽きる。
世界を飛び回る映像
特に印象的だったシーンは、大量の本が並んだ図書館を縦横無尽にカメラが移動するシーンだ。
作りこまれた美しいセットとそれをより美しくするくどすぎないCG、その世界を好きな角度からロングカットで撮影する。
長まわしの力強さは、「バードマン(あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡)」や、「ゴッド・ファーザーPart1」冒頭で立証されている。
手書きのアニメーションでは実現不可能な躍動感のある映像は、より作品の世界に引き込んでくれる。
光の描写
太陽の位置は、世界の空気を決定づける。
今現在住んでいるプラハは日本よりも北にあるため、冬は日照時間が短い。
高度が低く、街は淡い色彩に包まれる。
本作では、太陽の位置が明確にわかる。
逆光であったり、夕暮れ時であったり、昼間であったり…
太陽の位置が変わることで世界の色彩が変わり、長編の作品であるにも関わらず、映像に退屈することはない。
髪の描写
主要な民族の「ゲルフリン」はみな一様に髪が長く、また、それぞれの民族で髪型が異なっており、それが民族の特色として表れている。
東山奈央さん演じるディートは、長い間、洞窟の奥底でほかの民族と関わることなく暮らしてきたいわば田舎者で、髪の毛はボサボサだ。
一方、王族の三姉妹は美しい長い髪の毛を各々が違った結い方をしている。
どことなく、エルフの流れをくむキャラクター設定となっているように思えた。
服装と小物
各キャラクターのまとっている服装は勿論、クリスタル城の内装、機械や移動手段の車に施された装飾、日用品など、細かいところまで完璧に作られており、映像に一切の淀みを見せなかった。
7民族のゲルフリン族、スケクシス族、その他の生き物たちと多くの登場人物が出てくるが、細かいつくり込みのおかげで、誰がどの民族の誰なのか非常にわかりやすい。
妥協のない声優陣
出演した役者は全員が正に「声優」であった。
パペットで演じられたキャラクターたちは、CGや手書きのアニメーションよりもどうしても表情の表現力が劣る。
人間ではないのであまり表情が読み取れないことにそれほど違和感はないのだが、物語を進める上ではどうしてもネックになりうる。
それを声優陣が見事な演技でカバーしたといえるだろう。
作中、東山さんの演じるディートは正しく純粋無垢で好奇心旺盛なディートそのものであった。
まとめ
光、髪の毛、背景…美しい映像をロングカットで撮影する。
ファンタジー作品でこれ以上のものが望めようか?
各キャラクターは生きていて、惑星トラは実在する。
そうとしか思えない映像が広がっていた。
異世界への良い旅を!
本作の映像美について述べてきたが、物語も非常に素晴らしい。
セカンドシーズンも制作されるであろう終わり方だったので、続きが待ち遠しい。
「ダーク・クリスタル:エイジ・オブ・レジスタンス」
本作は、脚本から映像から音声からなにまで完璧に作りこまれている。
それを象徴するかのように、「ドルビー・アトモス」での配信もしている。
プランによっては4K対応で配信もしている。
「4Kでドルビー・アトモスでダーククリスタル…」
素晴らしいではないか!
視聴する際はなるべくいい環境で視聴していただきたい。
意識が肉体を離れ、惑星トラへ旅をすることができるに違いない。
実に素晴らしい「名作」だった。
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